|
|
|
Kさん…神奈川県立横浜清陵総合高等学校
(高校生エイズフォーラム生徒運営委員会 副委員長)
私は、妊娠時HIV抗体検査で陽性であることが分かった女性が、出産を決意するまでの心境を語った1枚の新聞記事を読み、母子感染について深く考えさせられました。
"検査を受けなければ病気を知らないで幸せにすごせたのに、とも思ったが、今はこの子ができて、自分の寿命を延ばすことができ、産んで良かった"という内容でした。
もし、この女性が妊娠する事なく、検査を受けることもなかったら、発症するまで、自分が陽性であることに気づくこともなく、寿命を全うする事もなかったかもしれません。
最近では、同意を得た上で、妊婦の約95%がHIV抗体検査を受けています 1) が、妊娠が分かった時点で検査をすることは、本当に最適な時期なのでしょうか。
今、高校生である私たちは、母子感染を"まだまだ先にある、自分とは関係のないこと"と考え、性感染症やHIVに関しても他人事のように捉えがちだとも思います。
しかし、数年後に妊娠しHIV陽性だと分かったとすると、私たちの年頃で感染したという可能性もありえるのです。たとえば、性器クラミジア感染症の現在の罹患者数 2) は、
10代から20代の間で急上昇していて、女性においては15歳から19歳の感染者が全体の2割を占めるというデータや、性交経験のある女子高生の7人に1人が性器クラミジア感染症に感染している 3) というデータも出ています。
本当は今、どう行動するかが、結婚・妊娠・出産という時期に深く関わるのに、いかに性行為に対して無防備なのかがわかります。
また、性器クラミジア感染症を始め、性感染症の中には感染していても症状がないものもあります。検査を受けなければ、自分の本当の健康状態を知ることができないということになります。
性行為に対して無防備な10代である私たちが、検査を受けることの重要性を改めて感じました。
実際に高校生が検査に行こうとすれば、検査費用のことなどを家族に相談するかもしれませんが、「性感染症にかかったかもしれない」と素直にいえる人は少ないし、「陽性だったらどうしよう」という不安が強くなり、逆に行きづらくなることもあると思います。
私も、もし陽性判定を受けたら、学校へ通えなくなってしまうほど、今の生活はすべて変わってしまうのではないかと思っていました。
しかし、今回、HIV感染者のお話を伺って、自分が陽性だと分かれば誰もが動揺してしまいますが、その後の人生を有意義にするためにも、ケアを受け、HIVと向き合うことが必要だということを知りました。
検査を受けるうえで大変なことはたくさんありますが、検査に行かず不安を抱えたまま生活するよりも、陰性判定を受ければ、安心することができるのも事実です。
ただし、陰性判定を受け、「あんな行動をとっても大丈夫だったから、これからも大丈夫だろう」とさらに無防備な性行為を繰り返すのでは意味がなく、検査を受けたのを機に、いかに自分の行動を変えていけるかが鍵になると考えます。
HIV抗体検査を保健所では無料で受けられるというCMを見かけることが多くなりました。誰でも体調が悪い時に病院にかかるような気軽さで、気になることがあったら、HIV抗体検査を受けようという習慣を作っていくことも、私たちにできることだと思います。
性行為は本来、両親・祖父母らが守り続けてきた"生命(いのち)のバトン"を次の世代へと繋ぐためにあるものであって、決して軽く考える行為ではないはずです。
健やかな"生命のバトン"を次の世代に受けついでいくためにも、今の自分の性に対する行動を見つめ直し、「自分のため、大切な人のため・・・今すべきこと」考えてみてください。
引用参考文献・HP |
|
1)
厚生労働省 班別研究報告 |
「HIV感染妊婦の早期診断と治療および母子感染予防に関する臨床的・疫学的研究」
平成17年 |
2) http://www.city.yokohama.jp |
(横浜市衛生研究所 感染症発生動向調査委員会報告
「1999〜2004年 横浜市感染症発生動向調査」より抜粋) |
3) http://www.nikkeibp.co.jp
|
(「高校生のクラミジア感染症のサーベイランスとその問題点」
2004.12より抜粋) |
|
|
前ページへ
次ページへ
本報告書は神奈川県立高等学校 性・エイズ教育実践研究会様のご協力、ご承諾をいただき掲載しております。
尚、一部個人名や学校名などは省略させていただいております。 |
|
|
|